事業場内最低賃金は、補助金申請において重要な要件の一つです。
特に、事業場内で働く従業員に適用される最低賃金の水準を適切に設定することは、補助金の受給に欠かせません。
この記事では、事業場内最低賃金の定義や計算方法から、地域別最低賃金との違い、そして具体的な注意点をわかりやすく解説します。
目次
事業場内最低賃金とは
計算方法
事業場内最低賃金の確認方法
地域別最低賃金を調べる方法
具体的なケース
事業場内最低賃金の影響
従業員への影響
企業への影響
注意点
①地域別最低賃金が改定された場合
②策定した賃金引上げ計画の未達の場合
③補助事業の実施場所が複数ある場合
④賃上げのタイミング
まとめ
事業場内最低賃金(じぎょうじょうないさいていちんぎん)とは、補助事業の実施場所で働く従業員に適用される最低時給です。
補助金を活用する際には、「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円とする必要があります」といった要件が出てきます。
事業場内最低賃金の対象となるのは、時給もしくは、月給の場合の基本給や職務手当です。
臨時賃金、賞与、時間外労働手当、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などの手当は含まれません。
次の章では、具体的な計算方法についてまとめていきます。
事業場内最低賃金を確認するには、まず自分の賃金(基本給)を時給換算することが必要です。
月給制や日給制の場合、所定労働時間に基づいて時給に換算し、それを基に最低賃金を比較します。
・日給の場合:1日の所定労働時間で日給を割ります。例えば、日給が8,000円で、1日の所定労働時間が8時間の場合は、8000÷8₌1000円となります。
・月給の場合:1ヶ月の所定労働時間で月給を割ります。例えば、事業場内最低賃金に該当しない金額を除いた金額が200,000円で、1ヶ月の所定労働時間が160時間だった場合は、200,000÷160=1,250円となります。
・歩合給を含む場合:過去1年間(または3ヶ月以上)の平均を算出してから時給換算します。例えば、歩合給を含む給与が過去3ヶ月の平均で300,000円であり、1ヶ月の所定労働時間が160時間の場合、300,000÷160=1,875円となります。
地域別最低賃金は都道府県ごとに定められ、すべての労働者に適用され、厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。
最低賃金は毎年10月に改定されるため、定期的に最新情報を確認することが重要です。
実際に、上の画像を参考に地域別最低賃金+30円とはどういうことか考えてみます。
東京都の地域別最低賃金は2023年8月現在で1,072円でした。
補助金の基本要件である「事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする」を満たすには、従業員の時給を1,072円+30円=1,102円以上に設定する必要があります。もし、事業場内最低賃金で働く従業員の時給が1,100円だった場合、「地域別最低賃金+30円」に達していないため、翌年の3月分の給与(4月支給分)までに2円以上の賃上げが必要です。
また、地域別最低賃金が引き上げられた場合には、補助事業終了時点(3〜5年後)で、改訂後の最低賃金+30円以上を維持するためにさらに賃上げを行わなければなりません。
賃金引上げ枠を利用する場合、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+50円以上に引き上げることが求められます。
具体的には、補助事業の採択後、事業を開始してから補助事業の完了までの「実施期間中」に行う必要があります。
第15回公募以降、賃金引上げ幅が+30円から+50円に変更されていますので注意が必要です。
事業場内最低賃金の向上は、従業員のモチベーションや仕事への満足度を高めることにつながる可能性があります。
事業場内最低賃金の引き上げにより、最も低い賃金水準で働く従業員の収入が増加し、生活水準の向上につながります。
特に非正規雇用や若年労働者にとって、この賃上げは大きな影響を与えます。
事業場内最低賃金の引き上げは、企業にとって人件費の増加を意味し、特に中小企業や労働集約型産業に大きな影響を与える可能性があります。
ただし、賃金水準の向上は人手不足で悩む企業にとっては人材確保のハードルを下げ、生産性向上につながるかもしれません。
結果として、企業の競争力強化にもつながるため、必ずしも費用が重なることでのマイナスな影響だけではありません。
地域別最低賃金が引き上げられた場合、事業場内最低賃金も改定後の最低賃金に30円以上加えた水準を維持しなければなりません。
もし引き上げ後の基準を満たさない場合は、速やかに賃金を再調整する必要があります。改定のタイミングを逃さないように定期的な確認が必要です。
事業場内で策定した賃金引上げ計画が未達の場合、補助金の要件を満たさなくなり、補助金の返還が求められることがあります。
未達のリスクを最小限にするために、定期的な進捗確認と調整が重要です。
補助事業の実施場所が複数ある場合、各事業場ごとに最低賃金基準を満たす必要があります。
全ての事業場で一貫して基準を超える賃金を設定しなければなりません。
これには、地域ごとの最低賃金差異を考慮した賃金設定が求められるため、管理が複雑になる可能性があります。
賃上げのタイミングは、補助金によって異なります。
小規模事業者持続化補助金では、申請日以降で補助事業終了日までと時期が定められています。
一方で、ものづくり補助金では、毎年事業化報告の必要があり、最低賃金の改定も毎年行われます。
事業化報告は毎年4月〜5月に行われるため、3月に賃金引上げをする必要があります。
このように、長期計画の補助金では、これらの改定に継続的に対応することが重要ですので、十分な注意が求められます。
事業場内最低賃金を適切に管理することは、従業員のモチベーション向上や企業の人材確保に寄与するだけでなく、補助金を活用する上でも非常に重要です。
地域別最低賃金の改定や賃金引上げ計画の達成状況を確認し、複数の事業場を運営する場合には一貫した基準を維持することが求められます。
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