事業再構築補助金の第10回公募が、現在受付中です。
第10回公募分では、8つの申請枠が用意されています。事業再構築補助金の申請を行う際は、補助事業で取り組む事業内容や補助金額、補助率によって、申請枠を選ぶかたちになります。
今回は、事業再構築補助金の第10回公募分における8つの申請枠について、どのような内容なのか、補助金額や補助率についても、それぞれ解説していきます。
あらためて、事業再構築補助金についてお伝えします。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売り上げの回復が期待しづらい中、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことが重要です。そのため、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、又は事業再編という思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援します。
出典:事業再構築補助金HPより
つまり、新型コロナウイルス感染症の影響で、既存事業が継続困難な場合に、新たな事業の柱の立ち上げに挑戦するのを支援するための制度。それが事業再構築補助金です。
現在は第10回公募分を受け付けていて、受付期間は令和5年6月30日(金)18:00までとなります。
第10回公募分では、8つの申請枠があります。
それぞれについては、この後解説していきますが、まずは、8つの申請枠すべてに共通する必須要件についてお伝えします。
①経済産業省が示す「事業再構築指針」に沿った3~5年の事業計画書を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること
②補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3~5%(事業類型により異なる)以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3~5%(事業累計により異なる)以上増加の達成
まず、①の認定経営革新等支援機関ですが、商工会議所や金融機関、中小企業診断士や税理士など、さまざまな機関や専門家が担当します。(弊社も認定経営革新等支援機関となります)
もし、あなたのお近くにいる認定経営革新等支援機関がどこかを知りたいときは、以下のサイトから調べてみてください。
認定経営革新等支援機関 検索システム
https://www.ninteishien.go.jp/NSK_CertificationArea
ただし、補助金額の申請が3,000万円を超える場合は、認定経営革新等支援機関に加えて、金融機関の確認も必要となります。
もし、金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねている場合は、金融機関のみで大丈夫です。
次に、②ですが、付加価値額は以下の式から求めます。
付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
この付加価値額を、年率平均3~5%以上増加させるための取り組みが求められます。
この2つの要件を満たすことが、事業再構築補助金を申請する際の共通の必須要件となります。
それでは、8つの申請枠について、それぞれ解説します。
成長枠は、成長分野への大胆な事業再構築に取り組む中小企業等を支援するためのものです。
第9回公募分で「通常枠」だったものが、第10回公募分から「成長枠」へと変更になりました。第9回公募分までは、売上高減少要件がありましたが、「成長枠」に変更されたことで、その要件は撤廃されています。
そのため、売上高の減少要件にあてはまらない事業者でも申し込みができるようになったのは、大きなメリットだといえます。
「成長枠」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
①取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
気になるのは、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態が何か、ということです。こちらは事務局が公開しているリストがあります。そちらをご確認ください。
成長枠対象リスト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/seichowaku_list.pdf
補助金額、補助率は以下の通りです。
従業員数20人以下:100万円~2,000万円
従業員数21人~50人:100万円~4,000万円
従業員数51人~100人:100万円~5,000万円
従業員数101人以上:100万円~7,000万円
中小企業等:1/2(大規模な賃上げ(※)を行う場合は2/3)
中堅企業等:1/3(大規模な賃上げ(※)を行う場合は1/2)
※事業終了時点で、①事業内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成する必要があります
「グリーン成長枠」は、研究開発・技術開発または人材育成を行いながら、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組を行う中小企業等の事業再構築を支援するものになります。
第9回公募分では「スタンダード」のみでしたが、第10回公募分から新たに、要件が緩和された「エントリー」が追加されました。
「エントリー」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行う。
②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
一方の「スタンダード」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発又は従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行う。
②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
なお、グリーン成長戦略とは、日本が2050年までにカーボンニュートラルを達成するためのもので、技術戦略や成長戦略が策定されたのが、以下の14分野になります。
・洋上風力・太陽光・地熱
・水素・燃料アンモニア
・次世代熱エネルギー
・原子力
・自動車・蓄電池
・半導体・情報通信
・船舶
・物流・人流・土木インフラ
・食料・農林水産業
・航空機
・カーボンリサイクル・マテリアル
・住宅・建築物・次世代電力マネジメント
・資源循環関連
・ライフスタイル関連
補助金額、補助率は以下の通りです。
「エントリー」の場合
従業員数20人以下:100万円~4,000万円
従業員数21人~50人:100万円~6,000万円
従業員数51人~:100万円~8,000万円
中堅企業:100万円~1億円
中小企業等:1/2(大規模な賃上げ(※)を行う場合は2/3)
中堅企業等:1/3(大規模な賃上げ(※)を行う場合は1/2)
「スタンダード」の場合
中小企業:100万円~1億円
中堅企業:100万円~1.5億円
中小企業等:1/2(大規模な賃上げ(※)を行う場合は2/3)
中堅企業等:1/3(大規模な賃上げ(※)を行う場合は1/2)
※事業終了時点で、①事業内最低賃金+45円、②給与支給総額+6%を達成する必要があります
第10回公募分から、新たに追加されたのが「卒業促進枠」です。
さきほどの「成長枠」と「グリーン成長枠」の上乗せ枠で、「卒業促進枠」のみで申請することはできません。「成長枠」または「グリーン成長枠」と同時に申請を行う形になります。
「卒業促進枠」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
補助事業終了後3~5年で、中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること、です。
中小企業の定義は、中小企業基本法では、資本金と従業員数で定められています。
出典:中小企業庁 FAQ「中小企業の定義について」
https://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq01_teigi.htm#q1
なので、「卒業促進枠」を申請する際は、資本金や従業員数を増やし、中小企業基本法で定められた金額と数を超える必要があります。(売上や利益ではありません)
補助金額、補助率は以下の通りです。
「成長枠」または「グリーン成長枠」の補助金額と同額
※「成長枠」または「グリーン成長枠」の補助金額が2倍になるということです
中小企業等:1/2
中堅企業等:1/3
「大規模賃金引上促進枠」は、さきほどの「卒業促進枠」と同じく、「成長枠」と「グリーン成長枠」の上乗せ枠です。
第9回公募分では「大規模賃金引上枠」という申請枠がありましたが、第10回公募分からは「大規模賃金引上促進枠」となり、上乗せ枠に変更されています。
そのため、「大規模賃金引上促進枠」のみで申請することはできません。「成長枠」または「グリーン成長枠」と同時に申請を行う形になります。
なお、「大規模賃金引上促進枠」と「卒業促進枠」の同時申請は行えないので注意が必要です。
「大規模賃金引上促進枠」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
補助事業終了後3~5年の間に、
①事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げる
②従業員数を年率平均1.5%以上増員させる
ことです。
そのため、「大規模賃金引上促進枠」を申請する際は、賃上げと従業員数の増加を実現させる必要があります。
補助金額、補助率は以下の通りです。
3,000万円
中小企業等:1/2
中堅企業等:1/3
第10回公募分から新たに追加された申請枠が「産業構造転換枠」です。
「産業構造転換枠」とは、市場規模が急速に縮小している市場から抜け出すためのものです。
「産業構造転換枠」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
①現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態の新規事業に転換すること
②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、その基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること
過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態が何かは、事務局が公開しているリストをご確認ください。
産業構造転換枠対象リスト
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/tenkanwaku_list.pdf
補助金額、補助率は以下の通りです。
従業員数20人以下:100万円~2,000万円
従業員数21人~50人:100万円~4,000万円
従業員数51人~100人:100万円~5,000万円
従業員数101人以上:100万円~7,000万円
中小企業等:2/3
中堅企業等:1/2
また、補助事業に取り組むことによって、既存事業を廃業する場合は、廃業費も補助対象となり、最大2,000万円上乗せされます。
第9回公募分から、引き続き設定された申請枠が「最低賃金枠」です。
令和4年10月に、最低賃金が全国平均31円引き上げられました。その影響で人件費が上がり、経営が圧迫されている事業者が、新たな事業に進出して、経営の立て直しを行うための支援を行うのが「最低賃金枠」です。
なお、「最低賃金枠」は、事前着手が可能となります。
「事前着手申請」を行うことで、採択前、交付決定前に発生した経費を、補助事業対象経費として計上できるようになります。ただし、令和4年12月2日以降のものが対象となるため、注意が必要です。
「最低賃金枠」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
①2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
②2021年10月から2022年8月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること。
補助金額、補助率は以下の通りです。
従業員数5人以下:100万円~500万円
従業員数6人~20人:100万円~1,000万円
従業員数21人以上:100万円~1,500万円
中小企業等:3/4
中堅企業等:2/3
第9回公募分で設定された申請枠の「回復再生応援枠」と「緊急対策枠」が統合されたものが、「物価高騰対策・回復再生応援枠」です。
コロナや物価高騰により、依然として厳しい状態にある事業者に対して支援を行うのが「物価高騰対策・回復再生応援枠」となります。
なお、「物価高騰対策・回復再生応援枠」は、事前着手が可能となります。
事前着手申請を行うことで、採択前、交付決定前に発生した経費を、補助事業対象経費として計上できるようになります。ただし、令和4年12月2日以降のものが対象となるため、注意が必要です。
「物価高騰対策・回復再生応援枠」は、以下のいずれかの要件を満たすことで申請することができます。
①2022年1月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。
②中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定していること。
補助金額、補助率は以下の通りです。
従業員数5人以下:100万円~1,000万円
従業員数6人~20人:100万円~1,500万円
従業員数21人~50人:100万円~2,000万円
従業員数51人以上:100万円~3,000万円
中小企業等:2/3(従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4)
中堅企業等:1/2(従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合は800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3)
最後は、第10回公募分から新たに追加された「サプライチェーン強靭化枠」です。
「サプライチェーン強靭化枠」は、海外に製造拠点がある事業者が対象で、製造拠点を日本国内に回帰する取り組みに対して、支援するといったものになります。
円安が続いていることや、カントリーリスクを考慮して、日本国内に製造拠点を移すことを推進するということで設けられました。
なお、「サプライチェーン強靭化枠」は、事前着手が可能となります。
事前着手申請を行うことで、採択前、交付決定前に発生した経費を、補助事業対象経費として計上できるというものになります。ただし、令和4年12月2日以降のものが対象となるため、注意が必要です。
補助金額は最大5億円とかなりの高額になっていますが、質の高い事業計画の策定が求められるため、採択率も低くなる可能性があります。
「サプライチェーン強靭化枠」は、以下の要件を満たすことで申請することができます。
①取引先から国内での増産要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)
②取り組む事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること。
③交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いこと。ただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと。
④事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること。
⑤その他、「DX推進指標」の自己診断結果をIPAに対して提出していること、IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★★二つ星」の宣言を行っていること、「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること。
補助金額、補助率は以下の通りです。
1000万円~5億円(建物費がない場合は3億円)
中小企業:1/2
中堅企業:1/3
事業再構築補助金の第10回公募の、8つの申請枠について解説しました。
申請枠が増えたこと、中には要件が緩和されたものがあるため、申請対象となる事業者は増えるのではないかと予想されています。
これまで申請を行ってこなかった事業者も、この機会にぜひ活用をご検討してみてはいかがでしょうか。
また、第10回公募分より、「グリーン成長枠」と「サプライチェーン強靭化枠」については、過去に採択を受けたことのある事業者の2回目の申請・採択が認められるようになっています。
再度の申請もぜひご検討ください。
こちらのサイトを運営している株式会社NewbeginningsJapanでは「3分で分かる!補助金の無料診断」を実施しています。
回答いただければ、最短15分以内補助金が活用できるかどうか診断いたします。
© new beginnings japan All rights reserved.
TOPに戻る