製造業は、原材料の調達から加工、仕上げ、出荷、販売などあらゆるプロセスを得て多くの商品が世の中で利用されています。
本記事は、特に以下のような方に有益な情報になります。
サプライチェーンについて知ることで、私たちが直近するべき課題が見えてくるでしょう。
サプライチェーンとは、原材料の調達から消費者の手元に届くまでの一連の流れ(プロセス)のことです。
サプライチェーンは必ずしも自社内のみで成立するわけではなく、複数の協力企業によって成り立つケースも見られます。
例えば、商品の企画を自社で行い、生産に必要な原材料を他社から仕入れて自社で生産し、物流業者に依頼して出荷、コンビニやスーパーなどで販売するという流れがあります。
このように、複数の企業との取引によってサプライチェーンが成立しており、各プロセスを最適化/最大化することで自社に利益をもたらします。
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、サプライチェーンにおける原材料の調達から最終目的での製品の搬送まで、製品やサービスに関連する商品、データ、コストを適切に管理することで最適化を目指す手法です。
サプライチェーンに無駄が生じると、製造原価が高くなり、生産期間が長くなります。
そのため、製造業における損失を防ぐためにサプライチェーンの無駄をなくし、改善して最適化することによりより多くの利益を追求することが出来ます。
実はサプライチェーンマネジメントは比較的古く、1980年代から現代にいたるまで提唱されています。
過去にも、製造業のサプライチェーンを見直す動きが見られましたが主に下記の理由からサプライチェーンマネジメントが再注目されています。
かつての国内製造業は高い技術力を武器に、海外でも競争優位性を発揮してきました。
しかし近年では、新興国が急速な成長を遂げており、製造業の国際競争が激化しています。
近年、新型コロナウイルス、ウクライナ戦争等の影響により原材料や物価の上昇やサプライチェーンの機能が正常に働かなくなるなどグローバル化のリスクも顕著に表れています。
今後も、自然災害や感染症のまん延などによるリスクが世界中に存在し、サプライチェーンは影響を受けるため、グローバルに対応する情報収集、管理が重要です。
より管理を効率化するために、重要になってくるのが次の項目で記載されているデジタル技術です。
AIやビッグデータ、DXの推進が求められたことで高度な管理体制を構築できるようになりました。
例えばDXでは、各業務プロセスをデータ化することで、組織やビジネスの仕組みを変革します。
このように従来の業務をデジタル化することにより、過去の管理体制を見直し、更なる最適化・効率化を図る動きが活発化しています。
サプライチェーンマネジメントと混同しやすい用語に、ERPがあります。
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の略で、日本では企業資源計画とも呼ばれます。
ERPは主に、企業の運営において、資材や設備、人材、情報などの経営資源を管理して最適に分配する手法です。
分かりやすく比較すると以下の表のようになります。
サプライチェーンマネジメント | ERP | |
実施目的 | 商品供給の最適化 | 自社業務・経営の最適化 |
対象範囲 | サプライチェーンの関係企業 | 自社のみ |
管理対象 | モノ・カネ・情報 | ヒトを含むすべての経営資源 |
導入業種 | 製造業のみ | 業種問わず |
特に異なる点は、サプライチェーンマネジメントが製造業特有の管理手法である一方で、ERPは業種を問わない点です。
ERPは業務・経営の最適化を目的とした手法のため、業種問わず様々な企業で取り入れられています。
そのため、サプライチェーンマネジメントには会計や人事、総務などの部門に関する内容は含まれていません。
ここでは、サプライチェーンマネジメントを実施するうえでメリットをご紹介します。
製造業がサプライチェーンマネジメントを導入するメリットは、下記の3点になります。
1つ目のメリットは、多くの製造業企業が頭を抱える在庫状況を、適正化できることです。
具体的に以下のようなことが在庫の適正化によって可能になります。
トヨタ自動車が開発した「必要なものを、必要な時に、必要なだけ」供給する「ジャストインタイム生産システム」はサプライチェーンマネジメントの成功例と言えるでしょう。
2つ目のメリットは、リードタイムを短縮できることです。
リードタイムとは、受注~納品にまでにかかる所要時間のことです。
サプライチェーンマネジメントを活用して製造のプロセスを最適化することにより、リードタイムの短縮が期待できます。
リードタイム短縮により得られることは以下の3点です。
近年急速に変化する市場への柔軟な対応が可能となり、企業の競争力向上が期待できます。
3つ目のメリットは、売上の最大化が見込めることです。
サプライチェーン全体を管理することで、各プロセスのデータを収集・管理し、より効率化を実現するための分析を行えます。
サプライチェーンマネジメントでは、モノの管理が重視されがちですが、消費者から抽出される情報も重要な管理対象です。
この情報を製品開発や生産体制に反映できれば、製品の高付加価値化や売上拡大の糸口が見つかるかもしれません。
このように、サプライチェーンにはさまざまなデータを収集できるため、それらを分析して活用することで業務の効率化を実現できます。
次に、サプライチェーンマネジメントを取り組む際の注意点やポイントについて説明していきます。
注意点とポイントは以下の4点になります。
基本的に、サプライチェーンマネジメントを実現するためには、システムを導入する必要があります。
ITシステムをづ入する際には、自社に適した形でシステムを構築しなければいけません。
そのため、構築できるシステム担当者や、運用するための人員も必要になってきます。
このように、初期費用だけでなく人件費やライセンス費用などのランニングコストも必要です。
導入前に、費用対効果が見込めるかどうかを確認しましょう。
IT導入に関しては、こちらに詳しく記載してあるので気になる方は拝見してください。
https://hojokin-ouendan.co.jp/2023-12-14(新しいタブで開く)
複数の協力企業で構築されたサプライチェーンの場合、異なる業者同士が足並みをそろえるのは難しくなる傾向があります。
そこで、サプライチェーン全体の最適化を図るのであれば、他の協力企業と連携を取り、改善行動にあたることが大切です。
組織を超えたマネジメントも必要をするためにもサプライチェーンマネジメントのシステムは、多くの従業員が必要になるのも事実です。
各社をどのようにマネジメントし、サプライチェーンマネジメントに取り組むのかなど、推進体制を検討する必要があります。
3つ目に、BCPを策定することです。
BCPとは、Business Continuity Planningの略で、自然災害やシステムトラブルなどが生じた際、被害を最小限におさえ事業を継続させるための計画です。
経済産業省が発布されている2023年版 のづくり白書にもこのように記載されています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、ロシアによるウクライナ侵攻など、事前の予測が困難な事象が相次いで発生し、我が国製造業も、調達先の把握や生産拠点の変更・拡充といった、サプライチェーンの強靱化が課題となっている。
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/pdf/gaiyo.pdf
変化に強いサプライチェーンを構築するためにも、平常時の効率性に加えて、有事の備えを万全にすることが必要です。
サプライチェーンマネジメントでは、サプライチェーンの全体像を可視化する必要があります。
なぜなら、管理対象を明確にし、どのような課題を抱えているかを把握する必要があるからです。
そうすることで、改善行動を取ることが出来、より効果を発揮しやすくなるでしょう。
花王株式会社は、早く、安定的な供給体制を確保するために一般的なチャネルと異なり、卸店を利用せずに小売店へ直接商品を届ける独自の仕組みを持っています。
この仕組みは、サプライチェーンマネジメントの方法論や運用技術を開発・構築することで成り立っています。
こういった取り組みから、受注から24時間以内に納品できる体制を現実のものとしています。
中西金属工業は、自動車製造のための搬送設備を製造・販売している企業です。
グローバル展開しており、海外売上高比率は80%を超えています。
サプライチェーンマネジメント導入前
⇒世界中に拠点が分散する中、拠点や部門ごとにシステムが分かれていたため、設計や製造などの情報が各システムに散在している非効率な状況
そこで、システムを同一基盤に統合
サプライチェーンマネジメント導入後
今回は、サプライチェーンマネジメントについて説明してきました。
サプライチェーンマネジメントを導入するには、コストや人材が必要になります。
ぜひ、今回の記事を参考に企業で取り入れるべきか否か考えていただけると幸いです。
サプライチェーンマネジメントを導入する際にかかるコストに関して、助成金・補助金の利用ができるのでぜひ専門家へご相談することをオススメ致します。
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