ものづくり補助金では「回復型賃上げ・雇用拡大枠」というものがあります。
現在、業績が厳しい状況にも関わらず、賃上げや雇用拡大に取り組む事業者を支援するための支援制度が、ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」です。
そこで今回は、ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」について、補助金額や要件について解説します。
ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」とは、業績が厳しい状況においても賃上げや雇用拡大に取り組み、革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム導入を行う事業者に対して、経費の一部を補助するためのものです。
業績が厳しい状況でも、積極的に経営革新を行い、従業員の賃上げや雇用をめざす事業者のために、通常枠よりも手厚く補助する目的で制定されました。
ものづくり補助金「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の補助上限額と補助率は、こちらになります。
補助金額
従業員数が5人以下の場合 100万円~750万円
従業員数が6~20人の場合 100万円~1,000万円
従業員数が21人以上の場合 100万円~1,250万円
補助率
2/3
「通常枠」と比べると、補助上限の金額は同じですが、補助率は2/3になっています。(通常枠は1/2)。補助率が優遇されているのが、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」となります。
ものづくり補助金に申請するためには、以下の要件をすべて満たす、3〜5年の事業計画を策定する必要があります。
①事業者全体の付加価値額を、年率平均3%以上増加
②給与支給総額を、年率平均1.5%以上増加
③事業場内最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上の水準にする
そのうえで、
(1)前年度の事業年度における課税所得がゼロ以下である。
(2)常時使用する従業員がいる。
(3)補助事業完了後の翌年度3月末時点で、給与支給総額の増加率が1.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準まで、増加目標が達している。
さらにこの3つの要件を満たすことが、ものづくり補助金「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の要件となります。
なお、「前年度の事業年度における課税所得がゼロ以下である」を証明するためには、各種確定申告書類の添付が必要となります。
また、「給与支給総額の増加率が1.5%、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の水準」、こちらを達成するための増加目標も設定する必要があります。
ものづくり補助金「回復型賃上げ・雇用拡大枠」ですが、申請する際はいくつか注意点があるのでお知らせします。
先ほどのものづくり補助金「回復型賃上げ・雇用拡大枠」の中で、補助事業完了後の翌年度3月末時点で、「給与支給総額の増加率が1.5%」もしくは「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」のいずれか一方でも達成できなかった場合、補助金交付額の全額返金が求められます。
理由としては、ものづくり補助金「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は、従業員への賃上げ等を前提とした優遇制度だからです。
ただし、天災など事業者の責任ではない事象が理由で達成できなかった場合は、上記の補助金返還は求められません。
ものづくり補助金「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は「通常枠」よりも補助率が優遇されていますが、実は採択率はほとんど変わりません。
実際に、直近の第14次公募においては、
■通常枠
申請者数 3,322
採択者数 1,661
採択率 50%
■回復型賃上げ・雇用拡大枠
申請者数 190
採択者数 95
採択率 50%
このように、両者ともに変わらない結果となっています。
以前は「回復型賃上げ・雇用拡大枠」で不採択になっても「通常枠」で再審査されるルールがあり、その結果事実上採択率が高くなるというメリットがあったものの、第14次公募からこのルールは撤廃されているので注意しましょう。
今回は、ものづくり補助金の「回復型賃上げ・雇用拡大枠」について解説しました。
以前はメリットがあった「回復型賃上げ・雇用拡大枠」ですが、現在は補助率以外は「通常枠」と一緒で、大きな違いがないというのが現状です。
また、要件を満たせなかった場合ですが、「通常枠」は賃上げ計画を策定すれば、補助金の一部返還で済みますが、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は要件を満たしていなければ、補助金の全額返還になります。厳しい条件のため、注意が必要です。
ただ、業績が厳しい中において、ものづくり補助金を活用していきたい。新たに取り組む革新的な製品・サービスの開発や、生産プロセス・サービス提供方法の改善を通じて、賃上げを積極的に行っていく、という意欲的な事業者は、この「回復型賃上げ・雇用拡大枠」に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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