補助金を活用して取り組んだ事業によって利益が生まれた場合、その一部を国に返還しなければいけない、ということをご存じでしょうか?
それが「収益納付」と呼ばれる制度です。「収益納付」は、一般的にあまり知られていませんが、対応を誤ると後からトラブルになることもあります。
本記事では、収益納付の詳細や対象となるケースなどを、わかりやすく解説していきます。
1 収益納付とは
1-1 収益納付の対象となる期間は?
1-2 収益納付の対象となる利益・対象とならない利益
2 収益納付の詳細を解説
2-1 収益納付の計算方法
2-2 収益納付の対象となるケース
2-3 収益納付の対象外となるケース
3 収益納付を発生させないための方法
まとめ
補助金制度における「収益納付」とは、補助金を活用して実施した事業によって得られた収益の一部を、国や自治体に返還する制度です。
具体的には補助対象となった施設や設備を使って事業を行い、その事業から得られた収入から経費を差し引いた「純利益」が一定の基準を超えた場合に、支給された補助金の額を限度額として国に返還するというものです。
収益納付の対象期間は補助金により異なりますが、主に2つのパターンがあります。
➀補助事業を開始してから実績報告書が受理されるまで ②実績報告書が受理された日を起点として、そこから起算して5年間または10年間(制度により異なる) |
※収益納付の対象期間は、制度により異なるので詳しくは公募要領をご確認ください。
収益納付ですが、全ての利益が収益納付の対象になるわけではありません。
収益納付の対象となる利益と、対象にならない利益の違いは以下の通りです。
(収益納付の対象になる利益)
収益納付の対象となるのは、補助金で導入した設備等の活用によって直接的に得られた利益です。
(対象となる利益の例)
・補助金を活用して導入した設備を用いて生産された商品によって得られた利益 ・補助金を活用して作成したシステムのサービス提供による利益 ・補助金を活用して出展した展示販売会で得られた利益 |
(収益納付の対象とならない利益)
収益納付の対象外となるのは、補助金で導入した設備等と直接の関係がない事業活動によって得られた利益です。
(対象とならない利益の例)
・補助金を活用して導入した設備と関連性のない事業における利益 ・事業実施対象となる店舗以外の支店が生み出した利益 |
このように、補助事業の実施によって直接的に得られた効果(利益)であると証明することが難しいため、収益納付の対象外となります。
収益納付の計算方法は、基本的に下記の式により求められます。
収益納付額=(本年度収益額-控除額)×(補助金確定額÷累計支出額)-累計納付額 本年度収益額:補助事業による売上から売上原価や販管費を差し引いた営業利益 控除額:累計支出から補助金を差し引き、その年までに自己負担した額 補助金確定額/累計支出額:補助金額が総支出に占める比率 累計納付額:過年度までに既に納付した額の総計 |
※収益納付の計算方法は、各補助金により異なる場合があります。詳しくは、各補助金の公募要領を確認してください。
上記の計算例をもとに、収益納付の対象となるケースをご紹介します。
【背景】 ある製造業者が「ものづくり補助金」で新型加工機を導入し、製造ラインの生産性が大幅に改善。受注量が増加し、明確な利益が発生しました。 【前提条件】 本年度収益額:1,200万円(補助対象製品の営業利益) 控除額:600万円(自己負担分としての人件費・材料費など) 補助金確定額:1,000万円 累計支出額:1,500万円(補助金+自己負担) 累計納付額:0円(初回) 【計算】(1,200万円-600万円)✖(1,000万円÷1,500万円)-0円 =600万円✖2/3=400万円 【結果】 投資額(自己負担)を上回る収益が発生しているため、400万円の収益納付が発生します。 |
上記の計算例をもとに、収益納付の対象外となるケースをご紹介します。
【背景】飲食店が「事業再構築補助金」を活用し、新たにテイクアウト対応の設備を導入。設備の導入により売上がやや伸び、利益も出たものの、補助事業にかかった自己負担額が大きいため投資額を回収できていない状況。 【前提条件】本年度収益額:400万円(テイクアウト事業の営業利益) 控除額:500万円(人件費・広告費など自己負担) 補助金確定額:1,000万円 類型支出額:1,500万円 累計納付額:0円 【計算】 収益納付額=(400万円-500万円)✖(1,000万円÷1.500万円)-0円 =(-100万円)✖2/3=-66.6万円 【結果】 計算結果より、マイナスとなっているため収益納付は発生しません。 |
補助事業における収益納付の発生を未然に防ぐためには、収益納付の対象期間に応じた適切な対応が必要です。
➀補助事業の完了後、速やかに実績報告を行う
【収益納付の対象期間】 補助事業を開始してから実績報告書が受理されるまでの期間 【対策方法】 実績報告書の提出を速やかに行うことで、収益納付の対象期間を短くすることができます。 また、実績報告書の提出を速やかに行うことで、補助金の支払い手続きを早期に完了することができるなどのメリットもあります。 【補助金例】 小規模事業者持続化補助金など |
②補助金と関連しない事業の利益を混同しないようにする
【収益納付の対象期間】 実績報告書が受理された日を起点として、そこから起算して5年または10年(制度により異なる)の期間 【対策方法】 事業化状況報告には、会社全体の利益と補助対象事業単体での利益をそれぞれ記入する欄があります。 記入の際には、補助事業に関連のない他事業の利益を混同しないよう注意してください。 補助事業に関係する収益だけを正確に区分して記載することで、収益納付に関する誤認やリスクを回避できます。 【補助金例】 事業再構築補助金、ものづくり補助金など |
以上の対策を行うことで、収益納付の発生確率を抑えることができます。収益納付を発生させたくない方は是非実践してみてください。
本記事では補助金の収益納付について解説しました。
収益納付のことを知らずにいると、後から数十万円〜数百万円の納付を求められる可能性もある重要な制度です。不安な場合は、必ず各補助金の事務局や支援機関に相談したうえで、トラブルを未然に防ぎ、安心して補助金を活用していきましょう。
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