事業再構築補助金は現在、第11回公募分の申請を受け付けています(申請締切は10月6日(金)です)。
事業再構築補助金は補助金額の大きさが魅力的ですが、そもそもの事業再構築という要件を満たしていないと、申請することができません。
そこで今回は、事業再構築補助金の事業再構築という用語について解説します。
中小企業庁が公開している事業再構築指針の手引きでは、事業再構築は以下のように定義されています。
「事業再構築」とは、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」、「事業転換」、「業種転換」、「事業再編」又は「国内回帰」の5つを指し、本事業に申請するためには、これら5つのうち、いずれかの類型に該当する事業計画を認定支援機関と策定することが必要となります。
中小企業庁 事業再構築指針の手引きより
つまり、事業再構築補助金に申請するためには、5つの類型のいずれかに該当する必要があるということです。
事業再構築の5つの類型は、次のとおりです。
①新市場進出(新分野展開、業態転換)
②事業転換
③業種転換
④事業再編
⑤国内回帰
それでは、1つずつ解説していきましょう。
事業再構築補助金の申請で、もっとも多く該当する類型が、新市場進出(新分野展開、業態転換)です。
こちらは現在メインとして行っている業種や事業はそのままで、新たな製品・サービスを始めて、新たな市場に進出するためのものになります。
新市場進出(新分野展開、業態転換)に該当するためには、
①製品等の新規性要件
②市場の新規性要件
③新事業売上高10%等要件
この3つを満たす必要があります。
「製品等の新規性要件」は、以下の2点を満たす必要があります。
①過去に製造等した実績がないこと
今まで取り組んだことがない製品・サービスを始めてください、ということです。
つまり、過去の業務において、一度でも製造、開発、提供していた製品・サービスは、「製品等の新規性要件」の対象外となります。
②定量的に性能または効果が異なること
新たな製品・サービスの性能や効能について、強度や耐久性、軽さなど定量的に計測できる場合は、性能や効能の違いを定量的に説明し、新たな製品・サービスであることを示す必要があります。
製品・サービスの性能や効果を定量的に計測できないという場合は、説明は不要で大丈夫です。
なお、「製品等の新規性要件」は、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。自社における新たな取り組みで大丈夫です。(2020年4月以降に取り組んだ事業が該当します)
ただし、以下の場合は「製品等の新規性要件」を満たさないので注意が必要です。
「市場の新規性要件」はシンプルに、既存事業におけるメインターゲットとは異なる顧客を、新たなターゲットにするということです。
なので、今まで対象外としていた属性(法人 or 個人、業種、性別・年齢、所得など)を顧客にする必要があります。
ただし、以下の場合は、「市場の新規性要件」を満たさないので注意が必要です。
「新事業売上高10%等要件」は3~5年間で設定した事業計画期間が終了した後、新たな製品・サービスの売上高が、企業における総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上になるような計画を立てる、といったものになります。
具体的にどのような事業だと、新市場進出(新分野展開、業態転換)の要件を満たすのか。中小企業庁の事業再構築指針の手引きに書かれている事例を紹介します。
例① 製造業の場合
航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定している
①製品等の新規性要件
②市場の新規性要件
③新事業売上高10%等要件
例② 不動産業の場合
都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定している
①製品等の新規性要件
②市場の新規性要件
③新事業売上高10%等要件
新たな製品等を製造することにより、主たる業種はそのままで、主たる事業を変更すると事業転換に該当します。
主たる事業の変更とは、日本標準産業分類に基づく中分類、小分類または細分類の産業を変更する、ということです。
例えば、日本料理店の場合、日本標準産業分類によると、以下になります。
大分類(業種):M宿泊業、飲食サービス業
中分類(事業):76飲食店
小分類(事業):762専門料理店
細分類(事業):7621日本料理店
事業転換は、上記の中分類・小分類・細分類のいずれかを変える必要があります。
そのうえで、事業転換に該当するためには、
①製品等の新規性要件
②市場の新規性要件
③売上高構成比要件
この3つを満たす必要があります。
「製品等の新規性要件」と「市場の新規性要件」は、新市場進出(新分野展開、業態転換)で前述したとおりです。
「売上高構成比要件」は3~5年間で設定した事業計画期間が終了した後、新たな製品・サービスに関する事業を、会社においてもっとも売上高構成比の高い事業にする必要があります。
つまり、これから取り組む事業を、自社におけるメイン事業にするということです。
新たな製品・サービスを始めるにあたって、主たる業種を変更する場合は、業種転換に該当します。
主たる業種の変更とは、日本標準産業分類に基づく大分類の産業を変更する、ということです。
例えば、レンタカー事業の場合、日本標準産業分類によると、以下になります。
大分類(業種):K不動産業、物品賃貸業
業種転換は、この大分類を別に変える必要があります。
そのうえで、事業転換に該当するためには、
①製品等の新規性要件
②市場の新規性要件
③売上高構成比要件
この3つを満たす必要があります。
「製品等の新規性要件」と「市場の新規性要件」、「売上高構成比要件」は、前述したとおりです。
事業再構築補助金の交付決定後に、会社法上の組織再編行為を行い、新たな事業形態において、前述した「新市場進出(新分野展開、業種転換)」「事業転換」「業種転換」のいずれかを行うと、「事業再編」に該当します。
会社法上の組織再編行為とは、
こちらのことをさします。
現在、製品を海外の生産拠点で製造しているが、製造方法に先進性を有した国内生産拠点を整備することで、「国内回帰」に該当します。(海外の生産拠点を閉じる必要はありません)
国内回帰に該当するためには、
①海外製造等要件
②導入設備の先進性要件
③新事業売上高10%等要件
この3つを満たす必要があります。
まず、「海外製造等要件」ですが、
こちらの2点を示す必要があります。
次に、「導入設備の先進性要件」です。
こちらは、「先進的な設備を導入すること」、「導入設備の導入効果を証明すること」が求められます。
まず、先進的な設備の導入ですが、現在導入している設備以上の機能が求められます。そのうえで、特注品であること、そして製造機器メーカーの最新カタログに掲載されている(これに相当するもの)であることを示す必要があります。
次に、導入設備の導入効果ですが、性能や効能を定量的に説明する必要があります。生産性や付加価値がどれくらい向上するのか。導入効果を数字で説明する必要があります。
最後の「新事業売上高10%等要件」は、前述したとおりです。
今回は、事業再構築の類型について解説しました。
事業再構築ではたいていの場合、「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」が求められるケースがほとんどです。
飲食店の2号店オープンや、業務効率化、既存顧客向けのサービス提供を目的に、事業再構築補助金の申請を検討される方がいらっしゃいますが、原則は、自社が今までに取り組んだことがない新たな事業を始めること。そして既存顧客とは異なる、新たな顧客をメインターゲットに変えることが求められます。
これらの類型を確認したうえで、事業再構築補助金で申請する計画を検討してみてはいかがでしょうか。
事業再構築補助金
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/
事業再構築指針の手引き
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/shishin_tebiki.pdf
日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000023.html
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