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先端設備等導入計画で固定資産税が最大で1/3に!そのメリットと申請方法を解説

2023年4月に「先端設備等導入計画」が改訂されました。

この「先端設備等導入計画」の認定を受けると、固定資産税の軽減措置や金融支援が受けられるようになります。

製造業においては、設備投資する際の資金を調達できるだけではなく、購入後の固定資産税の軽減が行えるなど、魅力的な支援制度といえるでしょう。

そこで今回は、2023年4月に改訂された「先端設備等導入計画」について、計画の概要や認定を受けるまでの流れを解説します。

先端設備等導入計画とは?

先端設備等導入計画とは、設備投資を行いたいという中小企業向けの認定支援制度です。

具体的には「先端設備」に該当する設備を導入し、それらを活用することで「労働生産性が向上する」といった内容の計画書を作成します。

その計画書が市区町村で認定されれば、固定資産税の軽減措置や金融支援が受けられるようになります。

先端設備について

気になるのは「先端設備」が何かということです。

今回は、以下の3つの要件を満たしたものが「先端設備」となります。

①投資利益率5%以上の設備であること

②以下に該当する減価償却資産であること

・機械装置(160万円以上)
・測定工具および検査工具(30万円以上)
・器具備品(30万円以上)
・建物附随設備(60万円以上)

③中古資産でないこと

この中で、もっとも注意が必要なのは、①の「投資利益率5%以上の設備であること」です。詳細は後述します。

なお、先端設備を購入できるのは、先端設備等導入計画の認定を受けた後になります。認定の前に取得(検収)した場合は、今回の対象とはならないため、注意が必要です。

先端設備等導入計画の認定で得られるメリット

それでは、先端設備等導入計画の認定を受けると、どのようなメリットがあるのでしょうか。それがこちらになります。

①先端設備の固定資産税の軽減

先端設備等導入計画に記載した先端設備の固定資産税が、取得から3年間で原則1/2になります。

さらに、従業員に対して賃上げ方針を表明し、その表明を行った書面を提出すると、先ほどの固定資産税が、取得から5年間で1/3に軽減されるようになります。

固定資産税の減税は、税制面で大きなメリットとなります。さらに賃上げ方針を表明することで、さらに年数と減税額が大きく増えるのが特徴です。

②信用保証の別枠での追加保証措置

信用保証の別枠が設定されるようになります。

そのため、金融機関で融資を受ける際は、より大きな金額での融資を受けることが可能となります。

ただし、融資には金融機関での審査があるため、先端設備等導入計画の認定を受けたからといっても、必ず融資を受けられるわけではありません。

先端設備等導入計画の申請に必要なこと

先端設備等導入計画の申請にあたり、以下の3つの要素を満たす必要があります。

①労働生産性が年平均3%以上向上すること

②投資利益率5%以上が見込める設備計画であること

③認定経営革新等支援機関の確認を受けること

それぞれを解説していきます。

①労働生産性が年平均3%以上向上すること

先端設備等導入計画は、中小企業が設備投資を通じて労働生産性の向上を実現するための計画となります。

そのため、労働生産性の向上につながるかどうかがポイントとなります。

労働生産性は、以下で求めることができます。

この式のとおり、営業利益を向上できているかどうかがポイントとなります。

なお、「年平均3%以上向上すること」とありますが、これは労働生産性を1年で3%以上向上させるということです。なので、先端設備等導入計画の年数を3年にした場合は、労働生産性を9%以上向上させる必要があります

②投資利益率5%以上が見込める設備計画であること

先端設備等導入計画で投資する設備は、投資利益率が5%以上である必要があります。

投資利益率をわかりやすくいうと、設備投資をしたらどれだけの利益を出せるのかということです。具体的には以下の式から求めます。

例えば、先端設備等導入計画の年数を3年にした場合、営業利益+減価償却費は3年分の合計費を算出し、それを3で割ること。そして、取得した設備の取得価額の合計額で割ることで、年平均の投資利益率を算出することができます。

この年平均の投資利益率が、5%を越えることが条件となります。

③認定経営革新等支援機関の確認を受けること

先端設備等導入計画は、市区町村に提出しますが、直接提出することはできません。

提出する前には、必ず計画が問題ないかどうか、認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります。

認定経営革新等支援機関でどのような確認を行うのかというと、計画が妥当かどうか、労働生産性や投資利益率が要件を満たしているかどうかです。専門家の視点から、第3者チェックを行います。

認定経営革新等支援機関は、商工会議所や金融機関、中小企業診断士や税理士など、さまざまな機関や専門家が担当します。

もし、あなたのお近くにいる認定経営革新等支援機関がどこかを知りたいときは、以下のサイトから調べてみてください。

認定経営革新等支援機関 検索システム
https://www.ninteishien.go.jp/NSK_CertificationArea

先端設備等導入計画の申請の流れ

一般的な先端設備等導入計画の申請の流れは、こちらになります。

なお、提出する市区町村によっては、別の書類が必要になる場合があります。必ず、提出する先の市区町村に確認を取るようにしてください。

STEP1 先端設備等導入計画の書類を作成して確認依頼を行う
(中小企業者→認定経営革新等支援機関)

STEP2 書類を確認し、問題がなければ確認書を発行する
(認定経営革新等支援機関→中小企業者)

STEP3 書類一式を提出する
(中小企業者→市区町村)

STEP4 審査を行い、計画認定を行う
(市区町村→中小企業者)

STEP5 設備を取得し、先端設備等導入計画を遂行する
(中小企業者)

先端設備等導入計画の事例紹介

ご参考までに、当方で関わった先端設備等導入計画をご紹介します。

建築資材の卸売業 A社 

建築資材の卸売事業を行なっていた。

先端設備等導入計画では、シュレッダーなどの機械を投資して新たに木質チップバイオマスチップ事業を開始し、5年計画で労働生産性が20%見込めるという計画を提出。

6,000万円の融資を受けて、シュレッダー等の製造機械を導入。

部品加工の製造業 B社

部品の不良品率が悪く、大量注文に対応できなかった。

先端設備等導入計画では、最新のNC旋盤機械を投資して5年計画で労働生産性が30%見込めるという計画を提出。

1,000万円の融資を受けて、最新のNC旋盤の設備を導入。

まとめ

2023年4月に改訂された「先端設備等導入計画」のメリットと申請方法についてお伝えしました。

「労働生産性が年平均3%以上向上すること」「投資利益率5%以上が見込める設備計画であること」という部分で、申請に向けたハードルは高いといえます。

しかし、これらが実現できるという計画を作って申請すれば、比較的認定されやすい制度であるといえます。

もし、申請に向けて取り組みたいという方は、ぜひ専門家にご相談ください。


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